「人生を彩る花束のようなジュエリーをつくろう」
その想いが形になるまでの、
挑戦と喜びのストーリーです。
「ブーケ」誕生の物語
花を愛する母との思い出
私の故郷は、千葉県の田んぼに囲まれた田舎町。
幼い頃は、学校から帰ると母と散歩に出かけるのが日課でした。母が四季折々に咲く花を見つけては、「◯◯が咲いてるね。この花が咲くと春がやってくる知らせなのよ」などと教えてくれ、少しだけその野に咲く花を摘んで、玄関先に飾っていました。
広くはない玄関で慎ましく咲く花が、なんだかとても可愛くて、心が温まったことを覚えています。
ドレスアップだけじゃない
心温まるジュエリーを作りたい
それから年月が経ち、2009年。
私は、ビズーの創業をひかえる中で「ドレスアップする以上の意味を持つジュエリーを作りたい」と考えていました。そんな時、ふと道端に咲く花を見て母との思い出が蘇ります。人の心を温める、花のようなジュエリーを作れないだろうか・・そう考えてデザインしたのが「ブーケ」でした。
人生の節目に思い切って手にすることが多いジュエリー。花束もまた、幸福な思い出とともにあるものです。手にするたびに、そんな思い出が蘇るジュエリーをつくろう。そこから私たちの試行錯誤がはじまりました。
小さな夢が、
やがて大きな挑戦へ
小さな宝石を敷き詰めるパヴェセッティングのジュエリー。複数の宝石を揃えて留め、滑らかに仕上げることが美しさの条件であるため、直径、高さなどを厳密に揃えることができる硬度の高いダイヤモンドや貴石を使用するのが一般的です。
そのような中で私たちが描いたのは、花々の多彩な美しさを留めるジュエリー。
半貴石のもつ柔和な色や輝きは欠かせないものでした。しかし、ビズー創業当時の15年前には(現在に至ってもなお)、半貴石を用いたものは少なく、実例のないジュエリー作りは困難を極め、大きな挑戦へと変わっていったのです。
美しい色を求めるがゆえの壁
ブーケを作る過程で最初に立ちはだかった壁は、カラーストーン特有の個体差でした。
たとえば「ピンクトルマリンの1.7ミリを20石」と買い付けても、そこには濃淡様々な石が混在していたのです。桜色をイメージしても、薔薇色の濃いピンクが混ざってしまっては配色のバランスが崩れてしまう。カラーストーンは同じ原石から切り出しても、切り出す箇所によっても色が変わるため、結果的に必要数以上にカットし、それらを20段階に色分けすることに。
サクラブーケには2〜4番、というようにイメージ通りの発色のものだけを使用することで、ようやく理想の配色が実現できるようになりました。
突破口は無い
手間暇を惜しまず、一石ずつ
もう一つの難所は、石留めでした。前述のとおり、ダイヤモンドや貴石のパヴェは、宝石のカットを揃えられるため、型に宝石を留めていけば完成します。私たちも、最初は従来通り型を作成し宝石を留めてみました。しかしその姿はいびつで、全く美しくなかったのです。
同じサイズでも、発色を引き出すため高さが異なる半貴石。そのため、その高さに合わせて紙の厚さに満たないほど薄く薄く地金を削り、宝石の表面がピッタリと揃うように石座を調整しました。爪もやや長めに作っておき、必要に応じて切って磨いて整えてセッティング。
従来なら不要な工程を一つ一つの石に施すことで、表面の滑らかさを実現しました。
ようやく完成した
「宝石の花束」
作っては最初からやり直し。長い工程を何度も繰り返し、いくつもの困難を乗り越え完成したブーケ。完成品を見たときは、作っていた私たちも驚き、感激したことを今でも覚えています。すべての苦労が喜びに変わった瞬間でした。
さて、この度15年の歳月を経て、ブーケがパワーアップしました。手前味噌ではありますが、よりディテールにこだわり作り変えたことで、宝石と宝石の境界線を感じず、手から溢れ咲くブーケさながらの輝きを楽しんでいただけます。私にとって母との思い出が蘇る花のように、身につける人にとって、眺めるたびに幸せな瞬間が蘇るような、心温まる花束となることを願っています。
「人生を彩る花束のようなジュエリーをつくろう」
その想いが形になるまでの、挑戦と喜びのストーリーです。
花を愛する母との思い出
私の故郷は、千葉県の田んぼに囲まれた田舎町。
幼い頃は、学校から帰ると母と散歩に出かけるのが日課でした。母が四季折々に咲く花を見つけては、「◯◯が咲いてるね。この花が咲くと春がやってくる知らせなのよ」などと教えてくれ、少しだけその野に咲く花を摘んで、玄関先に飾っていました。
広くはない玄関で慎ましく咲く花が、なんだかとても可愛くて、心が温まったことを覚えています。
ドレスアップだけじゃない
心温まるジュエリーを作りたい
それから年月が経ち、2009年。
私は、ビズーの創業をひかえる中で「ドレスアップする以上の意味を持つジュエリーを作りたい」と考えていました。そんな時、ふと道端に咲く花を見て母との思い出が蘇ります。人の心を温める、花のようなジュエリーを作れないだろうか・・そう考えてデザインしたのが「ブーケ」でした。
人生の節目に思い切って手にすることが多いジュエリー。花束もまた、幸福な思い出とともにあるものです。手にするたびに、そんな思い出が蘇るジュエリーをつくろう。そこから私たちの試行錯誤がはじまりました。
小さな夢が、やがて大きな挑戦へ
小さな宝石を敷き詰めるパヴェセッティングのジュエリー。複数の宝石を揃えて留め、滑らかに仕上げることが美しさの条件であるため、直径、高さなどを厳密に揃えることができる硬度の高いダイヤモンドや貴石を使用するのが一般的です。
そのような中で私たちが描いたのは、花々の多彩な美しさを留めるジュエリー。
半貴石のもつ柔和な色や輝きは欠かせないものでした。しかし、ビズー創業当時の15年前には(現在に至ってもなお)、半貴石を用いたものは少なく、実例のないジュエリー作りは困難を極め、大きな挑戦へと変わっていったのです。
美しい色を求めるがゆえの壁
ブーケを作る過程で最初に立ちはだかった壁は、カラーストーン特有の個体差でした。
たとえば「ピンクトルマリンの1.7ミリを20石」と買い付けても、そこには濃淡様々な石が混在していたのです。桜色をイメージしても、薔薇色の濃いピンクが混ざってしまっては配色のバランスが崩れてしまう。カラーストーンは同じ原石から切り出しても、切り出す箇所によっても色が変わるため、結果的に必要数以上にカットし、それらを20段階に色分けすることに。
サクラブーケには2〜4番、というようにイメージ通りの発色のものだけを使用することで、ようやく理想の配色が実現できるようになりました。
突破口は無い
手間暇を惜しまず、一石ずつ
もう一つの難所は、石留めでした。前述のとおり、ダイヤモンドや貴石のパヴェは、宝石のカットを揃えられるため、型に宝石を留めていけば完成します。私たちも、最初は従来通り型を作成し宝石を留めてみました。しかしその姿はいびつで、全く美しくなかったのです。
同じサイズでも、発色を引き出すため高さが異なる半貴石。そのため、その高さに合わせて紙の厚さに満たないほど薄く薄く地金を削り、宝石の表面がピッタリと揃うように石座を調整しました。爪もやや長めに作っておき、必要に応じて切って磨いて整えてセッティング。
従来なら不要な工程を一つ一つの石に施すことで、表面の滑らかさを実現しました。
ようやく完成した「宝石の花束」
作っては最初からやり直し。長い工程を何度も繰り返し、いくつもの困難を乗り越え完成したブーケ。完成品を見たときは、作っていた私たちも驚き、感激したことを今でも覚えています。すべての苦労が喜びに変わった瞬間でした。
さて、この度15年の歳月を経て、ブーケがパワーアップしました。手前味噌ではありますが、よりディテールにこだわり作り変えたことで、宝石と宝石の境界線を感じず、手から溢れ咲くブーケさながらの輝きを楽しんでいただけます。私にとって母との思い出が蘇る花のように、身につける人にとって、眺めるたびに幸せな瞬間が蘇るような、心温まる花束となることを願っています。
Writer
- 小川 翠( BIZOUX ブランドディレクター)