「誕生石」とは各月に割り振られた、宝石のことを意味します。誕生石の歴史は古く紀元前に遡り、古くから誕生石にはそれぞれのパワーや効果があるものとして人々に大切にされていました。現在でも誕生石を身に着けると幸せが訪れると信じられ、人気の高い宝石となっています。そんな誕生石はどのように生まれ、現在までに至るのか、またそれぞれの誕生石はどのような意味をもって命名され誕生したのか、その歴史をご紹介いたします。
誕生石の意味とは?
歴史からひも解く誕生石の由来
誕生石の意味とは?
歴史からひも解く誕生石の由来
誕生石とは
誕生石の起原
誕生石の起原には説がいくつかあり、定かではありません。しかし有名なものには旧約聖書などに12種類の宝石の記載があり、約3500年前に遡るのではと言われています。いくつかの説を年代が古い順にご紹介すると、12種類の宝石が歴史上最初に登場するのはバビロニア帝国。そこで用いられていた12星座と星座石が現在の誕生石の原型になったという説があります。次に登場するのは旧約聖書の「出エジプト記」。ユダヤ教の高僧たちが胸に身に着けていたプレートに12種類の宝石が付けられていたものが由来するという説です。そして新約聖書の「ヨハネ黙示録」のエルサレム城壁の土台に飾られていた12種類の宝石が由来するという説もあります。
このように誕生石の起原には諸説ありますが、誕生石を身につける習慣が広まったのは、18世紀にポーランドに移住したユダヤ人によるものといわれています。小さくて資産価値の高い宝石は、商売に長けるユダヤ人にとって格好の商材だったそうです。古くから宝石に関心を持ち続けた彼らは、20世紀に入るとアメリカに渡り、そこでもまた誕生石を広め、現在では各国でなじみの深いものとなりました。
現在の誕生石
1912年、アメリカの米国宝石商組合(現在のJewelers of America)によって正式に「誕生石」が制定され、1952年には改訂を経て現在のものになります。日本では1958年に全国宝石卸商協同組合が誕生石を制定。1月ガーネット、2月アメシスト、3月アクアマリン・珊瑚、4月ダイヤモンド、5月エメラルド・翡翠、6月真珠・ムーンストーン、7月ルビー、8月ペリドット、9月サファイヤ、10月オパール、11月トパーズ、12月トルコ石とし、日本の宝石として、珊瑚と翡翠が追加されました。またイギリスやフランスなど各国で、誕生石が制定され、そして時代を経て、人々の好みや宝石商たちの販売戦略などが加味されて現在の「誕生石」が誕生したのです。
各国の誕生石
誕生石 | アメリカ | 日本 | イギリス | フランス |
1月誕生石 | ||||
2月誕生石 | ||||
3月誕生石 | 珊瑚 | |||
4月誕生石 | 水晶 | |||
5月誕生石 | 翡翠 | クリソプレーズ | ||
6月誕生石 | ホワイトカルセドニー | |||
7月誕生石 | カーネリアン | カーネリアン | カーネリアン | |
8月誕生石 | サードオニクス | サードオニクス | サードオニクス | サードオニクス |
9月誕生石 | ラピスラズリ | |||
10月誕生石 | ||||
11月誕生石 | シトリン | シトリン | ||
12月誕生石 | ラピスラズリ | マラカイト |
各誕生石の意味
1月の誕生石:ガーネット
「ガーネット」は、果物の「ザクロ」という意味を持つ中世のラテン語「granatus(グラナタス)」に由来します。その名の通り、熟したザクロのような色合いが特徴の宝石です。その色合いから「情熱」を意味したり、ザクロの実から「実り」や「生命力」を象徴する、歴史上最も古い宝石のひとつ。赤色が有名ですが、実は30種類以上の色があるとされ緑やピンク、オレンジ、ブルーなど様々なカラーがある宝石です。
2月の誕生石:アメジスト
「アメジスト」は、「飲み過ぎたときの治療」を意味するギリシア語の「amethystos」に由来するという説と、ギリシャ神話でワインの神バッカスの悪戯で水晶に変えられてしまった少女「amethyst」に由来するという説があり、諸説あるようです。「酔いを避ける」という意味を持つアメジストは、身に付ける者の思考をクリアにして、すばやく対処できる力を与えるといわれています。またルネサンス期のヨーロッパでは、恋人たちの熱を冷まし、落ち着かせると考えられていました。
3月誕生石:アクアマリン
「アクアマリン」はラテン語の「水」を意味する「aqua」と「海」を意味する「marine」です。古代の船乗りたちは航海の安全を祈り、波を落ち着かせるお守りとしてこの宝石を身に着けました。また「幸せな結婚を象徴する石」とも呼ばれ、心に潤いや豊さをもたらすと信じられています。
4月の誕生石:ダイヤモンド
「ダイヤモンド」は「不屈」や「無敵」という意味のギリシャ語の「adamas」に由来します。モース硬度10の最強硬度を誇るダイヤモンドは、病や貧困、また死を退けることができると2世紀のある詩人は主張していたといわれています。何世紀にもわたり、ダイヤモンドは疫病から身に着ける人を保護すると考えられ、長寿、力、美、幸福などを意味すると考えられていました。
5月の誕生石:エメラルド
「エメラルド」は、「緑の宝石」を意味する古代ギリシャ語「smaragdos」に由来します。ローマの著述家プリニウス・セクンドゥスは、著書『博物誌』でエメラルドには癒しの力が備わっていると記しています。柔らかな緑色は疲れや倦怠感を癒すと古の時代から信じられてきました。
6月の誕生石:ムーンストーン
「ムーンストーン」には、その名の通り古くから月に関連する様々な言い伝えがあります。ヒンドゥー教の神話によると、ムーンストーンは月光が固まってできたと伝えられており、古代ローマでは、ムーンストーンは月の満ち欠けに応じてその姿を変え、また月の女神ダイアナが石の中に見えると信じられてきました。
6月の誕生石:真珠(パール)
「パール」は「西洋梨」を意味するラテン語の「perla」や、二枚貝を意味する「perna」に由来するなど諸説あります。無垢なイメージから真珠は、純粋さ、謙虚さ、純潔さを連想させ、「愛らしい純真さ」という意味を持ち合わせます。
6月の誕生石:アレキサンドライト
「アレキサンドライト」は1830年にロシアのウラル山脈で発見され、王位後継者アレクサンドル2世にちなんで命名されました。ロシアでは「皇帝の宝石」と呼ばれ、高貴な宝石とされています。赤色と緑色が帝国ロシアの軍服の色を反映し人気のある宝石となりました。
7月の誕生石:ルビー
「ルビー」は、「赤」の意味を持つラテン語の「ruber」に由来します。愛と情熱の色である赤色から、生命の源である血に関連付けられ、パワーやエネルギー、健康を与えてくれるものと考られていました。
8月の誕生石:ペリドット
「ペリドット」は、「宝石」を意味するアラビア語の「faridat」に由来します。また鉱物名のオリビンはオリーブという意味のラテン語「oliva」に由来します。古代や中世の時代から多くの文化で貴重なものとされ、中世ヨーロッパでは聖杯や教会で悪霊や夜の恐怖を追い払う、魔よけとして使用されていたそうです。
8月の誕生石:スピネル
「スピネル」は、その八面体の結晶の形からトゲという意味を持つラテン語の「spina」に由来します。かつてルビーやサファイアに間違えられていたこともあり、スピネルには歴史上の記述がほとんどありませんが、昔「黒魔術師」たちが「火から身を守る魔よけ」としても使っていたそうです。
9月の誕生石:サファイア
「サファイア」は、「青」を意味するギリシャ語「sappheiros」に由来します。古くから誠意、高潔を象徴するものとして何世紀にもわたって、王族や聖職者の式服の装飾品として使われてきました。古代ギリシャやローマの高貴な人たちの間では、その所有者を危害や嫉妬から守ってくれると信じられていました。中世の聖職者は、天を象徴するという理由でサファイアを身に着けていたそうです。
10月の誕生石:オパール
オパールは、「色の変化を見る」という意味のギリシャ語「opallios」に由来するラテン語の「opalus」に由来します。このギリシャ語の「opallios」は、古代インドのサンスクリットで「貴重な石」を意味する「upala」が変化したものです。多くの文化では、超自然的な起源と力がオパールにあるとされるのと同時に、全ての色を見ることができるため、最も幸運で魔法的な石とされてきました。
10月の誕生石:トルマリン
トルマリンは、「混合した色の石」という意味のシンハラ語の「toramalli」に由来します。トルマリンの1つの結晶には複数の色がよく見られるためこのように命名されたそうです。古代の神秘主義者たちは、トルマリンが様々な色を放つ宝石であったことから、芸術的表現を生み出す原因となると信じていたそうです。
11月の誕生石:トパーズ
「トパーズ」は、「炎」という意味を持つサンスクリット語「tapas」や、「探し求める」という意味のギリシャ語「topazos」に由来するといわれています。古代ギリシャ人は、トパーズは身に着ける人に力を与えてくれると信じていました。またヨーロッパでは14世紀から17世紀の間、トパーズが魔法を阻止し、怒りを払いのけてくれるものと考えてたそうです。
12月の誕生石:ターコイズ
「ターコイズ」は、「トルコの石」を意味するフランス語「pierre turquoise」に由来します。ヨーロッパの伝統では、「私を忘れないで」という意味を込めてターコイズのリングを送るそうです。またチベットではターコイズは宝とされており、健康や幸運をもたらし、悪から保護されると考えられています。
12月の誕生石:タンザナイト
「タンザナイト」は、原産地「タンザニア」を称えて命名されました。20世紀に発見されたこの誕生石は、澄んだ深みのある青から紫までと深い飽和した多色性をもち、「タンザニアの夕暮れの空」を映しこんだ宝石として人気を集めました。
12月の誕生石:ジルコン
「ジルコン」の語源についてはいくつか説があります。「鮮赤色」や「朱色」を意味するアラビア語「zarkun」や、「金色の」という意味を持つペルシャ語「zargun」由来するともいわれます。赤、オレンジ、緑、青などジルコンの色範囲が広いことを考えると、どちらの由来もありえます。中世には、この12月の誕生石は安眠を誘い、悪霊を追い払うものと考えられていました。
1月から12月まで、各月の誕生石を使った指輪(リング)やネックレス、ピアスなど、ジュエリーを多数用意しています!誕生石をお守りジュエリーとしていかがでしょうか?
参考文献:
一般社団法人日本ジュエリー協会
宝石専門チャンネルGSTV
GIA: Gemological Institute Of America(米国宝石学会) | 宝石のすべて
『天然石・ジュエリー辞典』 中央宝石研究所 監修 池田書店