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作家・山内マリコさんと考える、物語のあるジュエリーの楽しみ方

小説家・山内マリコさんと考える
物語のあるジュエリー

ものづくりの背後にあるストーリーを知ることは、好奇心のある人ならではの、モノの楽しみ方のひとつだと話す、小説家・山内マリコさん。今回、彼女とのコラボレーションで生まれた「物語を纏うジュエリー」は、まさに物語に触れることで、モノの魅力をより愛おしく感じられるコレクションです。

千年のときを超える『源氏物語』を、女性たちの生き方の物語として解釈し、山内マリコさんならではの視点で生まれた4話の短編小説。本記事では、そのストーリーが生まれるまでの背景や、物語とともにあるジュエリーの楽しみについて、山内マリコさんに伺いました。

 

小説家・山内マリコさんと考える、物語のあるジュエリー

ものづくりの背後にあるストーリーを知ることは、好奇心のある人ならではの、モノの楽しみ方のひとつだと話す、小説家・山内マリコさん。今回、彼女とのコラボレーションで生まれた「物語を纏うジュエリー」は、まさに物語に触れることで、モノの魅力をより愛おしく感じられるコレクションです。

千年のときを超える『源氏物語』を、女性たちの生き方の物語として解釈し、山内マリコさんならではの視点で生まれた4話の短編小説。本記事では、そのストーリーが生まれるまでの背景や、物語とともにあるジュエリーの楽しみについて、山内マリコさんに伺いました。

 

mariko_yamauchi

山内マリコ

小説家

1980年富山県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、 2012年『ここは退屈迎えに来て』 でデビュー。 主な著書に、『あのこは貴族』(集英社)、『選んだ孤独はよい孤独』(河出書房新社)などがあげられる。

慶應義塾大学卒業後、2007年にスタイリストとして独立。『BAILA』や『Oggi』などのファッション誌をはじめ、ブランドのウェブサイトのスタイリングやコラボ商品の開発など多方面で活動中。

今回スタイリングするジュエリー

ダイヤモンド K18リングフルール

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小説家 山内マリコ

1980年富山県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、 2012年『ここは退屈迎えに来て』 でデビュー。 主な著書に、『あのこは貴族』(集英社)、『選んだ孤独はよい孤独』(河出書房新社)などがあげられる。

Tales of her

物語を纏うジュエリー ー源氏物語の彼女たち

もし『源氏物語』の彼女たちが、現代の京都に生きていたら――。

 『源氏物語』に登場する4人の女性に着想を得て、小説家・山内マリコさんとともに生み出した、物語とジュエリーのコラボレーションコレクション。

『源氏物語』との出会いと短編小説に込めた思い

『源氏物語』は、角田光代さんの現代語訳の発売や昨年のNHK大河ドラマ『光る君へ』をきっかけに、ずっと興味を持っていて、関連書籍は手元にたくさん揃っていたんです。ただ、なかなか腰を据えて向き合う機会がなく、今回オファーをいただいたことをきっかけに、改めて読んでみようと思いました。

 

千年前の恋愛のあり方を現代の価値観で見ると、ありえない、と思う方も多いかもしれません。たとえば、登場人物の紫の上は今でいうと誘拐されているような状況です。今回の短編小説では、『源氏物語』の女君たちが、もし現代に生きていたらどんな人だろうか、というオーダーをいただいて。

 

原作にある、それぞれの女君が背負う苦しみは活かしながら、彼女たちがもし今の社会を生きるなら、1日の終わりにどんな気分でいたいと思うか、これからの人生をどう舵取りすれば幸せに過ごせるか、などを考えながら描きました。

 

『源氏物語』の時代に通ずる、現代を生きる女性の姿

Woman in a black blouse sitting at a table, hands clasped.

執筆を始める前に、源氏物語研究をされている清泉女子大学の藤井由紀子教授に、女君への理解を深める勉強会を開催いただき、ビズーのデザイナーさんとともに参加しました。勉強会で得たヒントと、自分が京都に住んでいたときの体験をもとに、それぞれの女君を現代のキャラクターへと変換していきました。

 

4人の女性を描く中で感じたのは、現代の女性もまた、千年前の女君たちと同じように、自分の人生の主導権を完全には握れていないということです。社会の中で女性が求められる「理想の女性像」や、知らず知らずのうちに受け入れてしまう役割意識など、時代を超えてもなお、背負っている重荷があると思います。社会からの制約だけでなく、それぞれが自分を縛っている理由や事情を抱えているのではないかと感じました。

 

例えば『明石の君』については、勉強会の中で、「一言でいうと毒親の娘です」というお話を伺いました。明石の君のお話は全4作の短編小説のラストのお話なのですが、彼女が自分を抑圧している存在と対峙する姿に焦点を当て、最終的にその束縛から解放されるまでを描くことで、この4つの作品をひとつの物語として完結することができたと思います。

 

ジュエリーと短編小説
共鳴するクリエイション

同じように女君を理解するというプロセスを踏んでいながらも、私はそこから現代に生きるキャラクターの背景を考えて小説に落とし込んでいき、ジュエリーデザイナーさんはその女君のイメージをデザインとして形にしていく。

 

ともに学びを深める過程を楽しみながら、小説とはまた異なるチャンネルでクリエイションを発展させていく点に、とても面白さを感じました。そうした多面的な関わり方こそが、この企画の魅力だと思います。

 

背景に物語があることで感じる、文化的な豊かさ

モノの背景を知ると、もっと愛着が湧いたり、大切に思えますよね。普通なら「かわいい」で終わるところが、今回のジュエリーが生まれた背景や、それぞれのキャラクターのことを知ると、同じモノでも見え方が変わります。

 

知識を得ることでモノの見え方が変わり、楽しみが深くなる。それは、知識欲や好奇心がある人ならではの、モノの楽しみ方ですよね。例えば旅行でも、その土地の歴史を少し学んで行くだけで、同じ体験でも受け取り手の感動が増す。そうした楽しみ方に文化的な豊かさを感じます。

 

今の時代、無味乾燥なものでも人気を得ることはできると思います。でも、今回のように『源氏物語』を知れば知るほど、より深く楽しめたり、愛せたりする。背景やこだわりを大切にしたものづくりは、やはり素直に素敵だと思います。ファッションやジュエリーの領域でこうしたアプローチをされることに、私自身もとても惹かれます。

 

Tales of her Collection

紫織の指輪
inspired by 紫の上

― 左手の薬指には結婚指輪をはめているが、
それ以外の指は自由だ

瑞貴のブローチ
inspired by 六条御息所

― 瑞貴はそんな呪いを込めて、
「光昭の再婚に」、乾杯のグラスを傾けた。

月子のピアス
inspired by 朧月夜の君

― けれど、損しない人生なんて、

生きるに値するんやろか?
月子はそういう子だった。

明日香の指輪
inspired by 明石の君

― 明日香の人生は、ずっと明日香のものではなく、
父のものだった。

展示案内

コレクションの発売を記念して、ビズー京都店にて企画展を開催いたします。物語の世界に浸りながら、ジュエリーをお楽しみいただける特別な機会です。

 

期間:2025/11/19(水)〜2026/01/18(日)

場所:ビズー京都店

入場無料/予約不要

Tales of her

物語を纏うジュエリー ー源氏物語の彼女たち

『源氏物語』に登場する4人の女性に着想を得て、小説家・山内マリコさんとともに生み出した、物語とジュエリーのコラボレーションコレクション。

#1 インタビューを読む
#2 ジュエリーを見る

『源氏物語』との出会いと
短編小説に込めた思い

『源氏物語』は、角田光代さんの現代語訳の発売や昨年のNHK大河ドラマ『光る君へ』をきっかけに、ずっと興味を持っていて、関連書籍は手元にたくさん揃っていたんです。ただ、なかなか腰を据えて向き合う機会がなく、今回オファーをいただいたことをきっかけに、改めて読んでみようと思いました。

 

千年前の恋愛のあり方を現代の価値観で見ると、ありえない、と思う方も多いかもしれません。たとえば、登場人物の紫の上は今でいうと誘拐されているような状況です。今回の短編小説では、『源氏物語』の女君たちが、もし現代に生きていたらどんな人だろうか、というオーダーをいただいて。

 

原作にある、それぞれの女君が背負う苦しみは活かしながら、彼女たちがもし今の社会を生きるなら、1日の終わりにどんな気分でいたいと思うか、これからの人生をどう舵取りすれば幸せに過ごせるか、などを考えながら描きました。

 

『源氏物語』の時代に通ずる、
現代を生きる女性の姿

Woman in a black blouse sitting at a table, hands clasped.

執筆を始める前に、源氏物語研究をされている清泉女子大学の藤井由紀子教授に、女君への理解を深める勉強会を開催いただき、ビズーのデザイナーさんとともに参加しました。勉強会で得たヒントと、自分が京都に住んでいたときの体験をもとに、それぞれの女君を現代のキャラクターへと変換していきました。

 

4人の女性を描く中で感じたのは、現代の女性もまた、千年前の女君たちと同じように、自分の人生の主導権を完全には握れていないということです。社会の中で女性が求められる「理想の女性像」や、知らず知らずのうちに受け入れてしまう役割意識など、時代を超えてもなお、背負っている重荷があると思います。社会からの制約だけでなく、それぞれが自分を縛っている理由や事情を抱えているのではないかと感じました。

 

例えば『明石の君』については、勉強会の中で、「一言でいうと毒親の娘です」というお話を伺いました。明石の君のお話は全4作の短編小説のラストのお話なのですが、彼女が自分を抑圧している存在と対峙する姿に焦点を当て、最終的にその束縛から解放されるまでを描くことで、この4つの作品をひとつの物語として完結することができたと思います。

 

ジュエリーと短編小説
共鳴するクリエイション

同じように女君を理解するというプロセスを踏んでいながらも、私はそこから現代に生きるキャラクターの背景を考えて小説に落とし込んでいき、ジュエリーデザイナーさんはその女君のイメージをデザインとして形にしていく。

 

ともに学びを深める過程を楽しみながら、小説とはまた異なるチャンネルでクリエイションを発展させていく点に、とても面白さを感じました。そうした多面的な関わり方こそが、この企画の魅力だと思います。

 

背景に物語があることで感じる、
文化的な豊かさ

モノの背景を知ると、もっと愛着が湧いたり、大切に思えますよね。普通なら「かわいい」で終わるところが、今回のジュエリーが生まれた背景や、それぞれのキャラクターのことを知ると、同じモノでも見え方が変わります。

 

知識を得ることでモノの見え方が変わり、楽しみが深くなる。それは、知識欲や好奇心がある人ならではの、モノの楽しみ方ですよね。例えば旅行でも、その土地の歴史を少し学んで行くだけで、同じ体験でも受け取り手の感動が増す。そうした楽しみ方に文化的な豊かさを感じます。

 

今の時代、無味乾燥なものでも人気を得ることはできると思います。でも、今回のように『源氏物語』を知れば知るほど、より深く楽しめたり、愛せたりする。背景やこだわりを大切にしたものづくりは、やはり素直に素敵だと思います。ファッションやジュエリーの領域でこうしたアプローチをされることに、私自身もとても惹かれます。

 

 

Tales of her Collection

紫織の指輪
inspired by 紫の上

左手の薬指には結婚指輪をはめているが、

それ以外の指は自由だ

瑞貴のブローチ
inspired by 六条御息所

瑞貴はそんな呪いを込めて、
「光昭の再婚に」、
乾杯のグラスを傾けた。

月子のピアス
inspired by 朧月夜の君

けれど、損しない人生なんて、
生きるに値するんやろか?
月子はそういう子だった。

明日香の指輪
inspired by 明石の君

明日香の人生は、
ずっと明日香のものではなく、
父のものだった。

小さい息子がいるのですが、今の家は山と海が近くて本人もアウトドア派なので、子育て面でもすごくいい環境だと思います。こちらに引っ越してから星空準案内人の資格も取りました。鎌倉の夜はわりと暗いので都内よりは星空が見やすいんです。天文学の知識を身につけて、息子に聞かれたときに答えられるようになりたいなと思って。そのほか、コロナ禍に立ち上がった「ニュー農マル」という援農コミュニティの活動に参加して農業に触れる機会ができたりと、オンとオフをはっきりと分けられるようになったことも、鎌倉に住んでよかったことのひとつです。

小さい息子がいるのですが、今の家は山と海が近くて本人もアウトドア派なので、子育て面でもすごくいい環境だと思います。こちらに引っ越してから星空準案内人の資格も取りました。鎌倉の夜はわりと暗いので都内よりは星空が見やすいんです。天文学の知識を身につけて、息子に聞かれたときに答えられるようになりたいなと思って。そのほか、コロナ禍に立ち上がった「ニュー農マル」という援農コミュニティの活動に参加して農業に触れる機会ができたりと、オンとオフをはっきりと分けられるようになったことも、鎌倉に住んでよかったことのひとつです。

展示案内

コレクションの発売を記念して、ビズー京都店にて企画展を開催いたします。物語の世界に浸りながら、ジュエリーをお楽しみいただける特別な機会です。

 

期間:2025/11/19(水)〜2026/01/18(日)

場所:ビズー京都店

入場無料/予約不要

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